下記福島民報にて、3月末にも東電において避難区域の財物賠償手続が始まるとの報道があった。
http://www.minpo.jp/news/detail/201302206730
昨年7月に基準を公表して以来、進める進めると言いながら、実に半年以上が経過している。
所詮はこれもどうだか、当てにならない。
さて、東電に対して、賠償を請求するには、このような直接の請求の他に、ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)を利用した手続もある。そして、ADRにおいて、避難区域の財物賠償請求は、既に始まっているのである。しかも、既に合意をして、賠償金額が支払済みの案件も多くある。
もっとも、今のところは経済産業省と東電が提示した金額に止まるものの、後に請求できる余地を残した形での合意であるため、一区切りとしては柔軟な解決方法だ。
いつ本当に始まるのか分からない東電の手続を待つよりも、被災者が自らADRを通じて賠償手続を進めた方が今では早いのではないか。
確かに、区域再編の問題はあり、東電が示す手続きであれば区域再編=賠償金額の差にもなりかねないものの、ADRでは周辺の線量はもちろんのことコミュニティーの維持、帰還の見通しなども判断要素として、全損か否かも判断されることになるから、この点でもADRの方が使い勝手が良い。
ADRは個人で利用するとなると書類の収集等裏付ける書面を添付しなければならない点で面倒な面はあるが、餅は餅屋の弁護士に依頼する方が無難である。
ADRでは、東電の手続とは異なり、弁護士費用の一定額についても賠償の対象とされる(基本的には賠償額の3%)ので、経済的な負担も少ない。
もちろん、ADRにおいても、真の生活再建のための賠償が得られるかという金額の面では最終的な解決にはならないものの、
遅々として進まない東電の手続きを待つよりも、ADRを通じて、避難区域の財物賠償に一区切りをつけるという手もあるのだ。
東電のペースに乗せられず早く避難区域の財物賠償を進めたいという方には、ADRを勧めている。
なお、先代の故人が登記名義人で相続登記が完了していない事案であっても、相続人が判明すればADRで請求することはできるだろう。
未登記物件ではこれが問題となるが、少なくとも役場の固定資産税評価証明書を取得可能であれば、ADRでも請求することはできるだろう。