事業承継

はじめに

裁判になってからが弁護士の出番だと思いがちです。
しかし、将来何が問題になるかを発見し早期に解決できるようにすることこそ、弁護士だけができる仕事です。
想定外のトラブルでビジネスチャンスを逃さないために、弁護士にできることがあります。
それはトラブルの種をいち早く発見し、社長にアドバイスすること。
また、もし裁判になっても短期間で解決できるよう事前に準備をしておくこと。
中小企業を取り巻く様々な分野で、弁護士の「課題発見力」が役立ちます

こんな質問にドキッときませんか?

  • 「社長に万一のことがあっても事業は存続できますか?」
  • 「社長が突然死亡した!遺言がない場合、会社をどうしたら?」
  • 「社長が突然死亡した!遺言がない場合、相続人間の争いはどうなる?」
  • 「社長に認知症の症状が現れた!?(経営者の高齢化対策)」

事業承継

経営者の死亡により事業の継続ができなくなる場合があります。事業承継は事業継続の重要な課題です。つまり、企業存続の過程で生じる経営上の課題の一つです。

経営上の課題としての事業承継

  • 必ずやってくる → 事前対策が可能
  • 時期、内容が予測可能 → 対策が可能

 だからこそ、様々な問題に長期的な視野をもって対処していくことで納得の事業承継を実現しましょう。

【質問】
息子に社長をやらせていますが、会社の株は私が持っています。このままでよいでしょうか?
【回答】
このまま放置すると、あなたが亡くなった際に株が分散して経営権の争いが起こる可能性があります。早めの事業承継対策が重要です。
【質問】
3年前に息子が我が社に入社しましたが、親の目からみても商売の才能がありません。会社のことを考えると番頭をしている専務に会社を継がせたいと考えていますが可能でしょうか。
【回答】
親族外での会社承継も可能ですが、無用な紛争を避けるためには時間をかけた事業承継をすることが望ましいです。
【質問】
長年会社を続けてきましたが、私も年なので引退をしたいと考えています。しかし、当社は私のほかは職人ばかりで経営ができる人間がいません。やはり会社を閉めるしかないでしょうか。
【回答】
職人がいて技術力がある会社であればその会社を買いたいと考える方もたくさんおられます。M&A等の方法により第三者に会社を引き継ぐことも考えられます。

コラム

 事業承継対策の方法としては、一般に①親族内承継(後継者が親族)②企業内承継(後継者が親族以外の従業員等)③M&A(企業の売却または譲渡)の3つがあるとされています。
 事業承継の中心はやはり①の親族内承継です。親族内承継の対策というとすぐに「相続税」の問題が頭に浮かびます。
 しかし、事業承継は経営を承継することが重要であり、相続税対策で株式を分散させてしまうと後継者が実質的に会社を支配することができず、運営に困難を生じさせてしまいます。少なくとも取締役の選任決議を通せる過半数の株式の議決権を確保したいところで、できれば合併や会社分割などの会社の行く末を決定する重要な決議を通すことができる3分の2以上の議決権を確保したいところです。
 通常はこのような決議をすることはないでしょうが、中小企業の存亡をかける危機の場合には必要なこともありますので、可能であれば3分の2以上の議決権を確保したいところです。
 ③のM&Aの割合は一般的に少ないのが現状です。これは「会社の身売り」というイメージがつきまとうからですが、「第三者への事業引き継ぎ」と考えてこれを伝えて行けば、周囲からも身売りとは思われなくなってゆくものと思われますので、今後はこの方法もより増えてゆくと思われます。
自分が創業したり、事業を承継した年齢を考えれば、「早すぎる」ということはないはずです。ただ、ここが事業承継の難しいところで、どうしても「まだまだ」と感じてしまうのでしょうが、後継者候補が30代の半ばになれば十分事業承継の適齢期です。
 事業承継は、経営者の相続(死)を想起させるものですし、経営者が実権を後継者に譲ることですから、経営者自身からはなかなか言い出したくない問題ということは理解できます。でも「10年後、20年後の自分と会社はどうなっているか?」を考えれば、自分の会社についても事業承継対策を始めなければならないことは自ずとわかってくると思います。
 中小企業の株価は以前よりも低額になっている可能性が高く、事業承継の際にネックになる税金問題は比較的小さくなっている可能性があります。ぜひ、ピンチをチャンスに変えて事業承継をしていただきたいと思います。
 特に、過剰債務を抱え、資金繰りも危機的状況にある中小企業の場合には、「民事再生」とセットで事業承継を実行することが考えられます。実際、この方法で会社の過剰債務をカットした上で子供さんに事業承継しているケースがありますし、私も実現させたことがあります。勇気のいる決断ですが破産や廃業させるよりは、よい決断です。このような場合に前述2で記載したように株式の議決権の3分の2以上を確保しているとスムーズに解決できることがあります。
 もし自分の会社がこのような状況にあると思われる場合には、事業再生と事業承継を扱っている弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士は事業承継について総合的に考えて相談に応じます。ぜひこの機会に事業承継について一歩を踏み出してください。

事業承継フロー

  1. 理解:経営者による事業承継の重要性、計画的取組の必要性
  2. 現状の把握:会社、経営者、後継者候補、相続時の問題点
  3. 後継者(承継方法)の決定
  4. 事業承継計画の立案(方法、経営そのものの承継と経営権・資産の承継の問題)
    • 親族内承継(相続人)
    • 企業内承継(役員、従業員など)
    • M&A
  5. 事業承継計画の実行