後記に被災者原発弁護団のHPから引用するとおり、
いわゆる中間指針に明示されていなかった旧緊急時避難準備区域内の自宅滞在者に対する
慰謝料について、原子力紛争解決センターが次のとおり和解案を提示しました。
①原発事故後平成23年9月末まで 1人月額10万円
②平成23年10月から平成24年2月末まで 1人月額8万円
※平成24年3月以降の慰謝料は提示されていません。
従前、中間指針に示されていなかったことについて明示的に示されたことは大きな一歩です。
東京電力には、被害者の早期救済のため、上記和解案を速やかに受け入れることを切に求めます。和解案を尊重すると明言している東京電力が和解案を拒否することは断じて許されません。
http://ghb-law.net/?p=291
以下、引用開始。
【報告】南相馬市民130人による原発ADR事件についてのお知らせ
2012.4.16
平成24年4月16日
南相馬市民130人による原発ADR事件についてのお知らせ
(緊急時避難準備区域内の滞在者慰謝料についての和解案の概要)
原 発 被 災 者 弁 護 団
問合先 〒105-0001
港区虎ノ門1丁目8番16号
第2升本ビル5階
TEL: 0120-730-750
当弁護団は、平成23年12月28日、南相馬市内の住民130人(34世帯)を代理して、原子力損害賠償紛争解決センターに対し、東京電力株式会社を被申立人とする和解仲介(原発ADR)を申し立てていましたが、本日午前10時に開催された第4回口頭審理期日において、同センターから和解案及びその理由が提示されました。 このうち、重要な争点となっていた、緊急時避難準備区域内の自宅滞在者(緊急時避難準備区域から避難せずに自宅に留まった方、及び一旦は避難したが帰宅した方をいいます。以下同じ。)の慰謝料についての、和解案の概要をお知らせいたします(その他の和解案の概要については別紙をご参照ください)。
中間指針等及び東京電力の見解
中間指針は、平成23年4月22日までの屋内退避者の慰謝料額を一人10万円と定めていますが、その後の期間についての慰謝料を明確に定めていません。また、中間指針第二次追補は、自宅滞在者について、「個別具体的な事情に応じて」賠償の対象となり得ると定めていますが、基準は明確にされていません。
※ 「屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、同区域において屋内退避をしていた者 (略)につき、一人10万円を目安とする。」(中間指針19頁V)
※ 「第1期又は第2期において帰還した場合や本件事故発生当初から避難せずにこの区域に滞在し続けた場合は、個別具体的な事情に応じて賠償の対象となり得る。」(第二次追補8頁5))
東京電力は、中間指針等を理由として、自宅滞在者については平成23年4月22日までの一人10万円の慰謝料しか認めない(但し、妊婦及び子については、中間指針追補が定める範囲で自主避難対象区域の自主避難者と同様の増額を行う。)という見解を示しました。
申立人の主張
自宅滞在者の多くは、家族や仕事、地域の役職上の必要その他により、避難をしたくても避難できず、又は一旦は避難しても自宅に戻らざるを得ない事情を抱えていました。自宅で生活しているといっても、人口の大幅な減少、地域医療の崩壊、小中学校等の閉鎖や教育環境の悪化、地域経済の停滞等により、生活基盤の喪失による不便や不安に苦しみ、今後にも大きな不安を感じていました。 このような自宅滞在者の精神的苦痛は、多くの不便や不安を抱えながら避難生活を送っている方の精神的苦痛と同程度であり、慰謝料の面で、自宅滞在者と避難者に、東京電力が主張するような大きな差を認めるべきではありません。申立人は本件ADR手続きにおいてその旨を主張し、南相馬市の生活基盤が喪失している実態や、自宅滞在中でも本件事故以前にはなかったようなご苦労、ご心痛があったことを立証してまいりました。 原子力損害賠償紛争解決センターも、このような南相馬市の状況を理解するため、平成24年3月4日に、仲介委員や調査官が南相馬市を訪問し、25世帯の申立人から直接被害の状況を聴き取る手続を行いました。
和解案
滞在者慰謝料として ①本件事故以降平成23年9月末まで 1人当たり月額 10万円
②平成23年10月から平成24年2月末まで 1人当たり月額 8万円
※個別具体的な事情により、別途増額されます。
※本和解案は平成24年2月末までを対象としたものであり、平成24年3月以降の慰謝料についての判断は示されていません。従って、平成24年3月以降の慰謝料も、今後の手続等で認められる可能性があります。
弁護団の意見及び評価
原子力損害賠償紛争解決センターが、南相馬市で口頭審理期日を開催するなどして自宅滞在者の苦痛に真摯に耳を傾け、本件ADRの申立てから3か月半という比較的短期間で、本件の申立人のみならず同様の状況にある自宅滞在者に及び得る和解案を提示したことは、本件ADRを担当された仲介委員、調査官及び事務局の熱意ある取組みの結果でもあります。弁護団は、同センターが中間指針等の不十分な部分を補う態度を示したことを評価します。
これまで東京電力が認めてきた慰謝料額を前提とすると、旧緊急時避難準備区域にお住まいの皆様に支払われる賠償金の総額が、これまでに支払われた仮払い補償金を下回るため、差額の返還請求を受けることをおそれて、東京電力への賠償請求を躊躇していた方もいらっしゃると思われます。今回の和解案が成立すれば、安心して正当な請求をしていただけます。
和解案の問題点 もっとも、以下のとおり、本和解案には不十分な点も少なくありません。今後の審理の中で更に検討し、被害の実態に即するように和解案の再考を躊躇せず進めることを求めます。
1 和解案では、自宅滞在者の慰謝料を中間指針に基づく避難者の慰謝料額を基準に算定していますが、その基準自体、これが最低限度の基準としても低すぎて妥当性と欠くという問題があります。また、中間指針の公表後に、被災者が被った被害の詳細とそれによって強いられた精神的苦痛の実態が明からになっており、これに応じて中間指針が定めた慰謝料額の基準の見直しが不可欠であるのに、その再検討をしていないため、自宅滞在者の慰謝料額も低額に留まっています。
2 南相馬市内では、今尚人口が大きく減少したままで、病院機能は十分回復しておらず、小中学校が再開したのも平成24年2月末であるなど、緊急時避難準備区域の指定が解除された平成23年9月末日において、生活基盤が回復したとはいえません。従って、その後の期間の慰謝料額を減額することには合理性がありません。
東京電力への要望 本件ADR手続きは、南相馬市民のADR事件のモデルケースとして審理され、その結果として本和解案が提示されました。東京電力株式会社は南相馬市における口頭審理期日に出席し、申立人ら被災者の苦しみや不安を直接聞く機会もありました。東京電力には、被災者の早期救済のため、本件和解案を真摯に検討し、速やかに受け入れることを求めます。
最後に本件申立人が、原発事故による不安を抱えつつ生活の再建に向けて多忙な中、貴重な時間を割いて本件ADR事件のためにご準備いただき、南相馬市内での口頭審理期日に出頭され、これまでのご苦労、ご心痛を語っていただいたことが、本日の和解案の提示につながっています。 本件申立人の皆様のご尽力に心から敬意を表します。
以上、引用終わり。