西日本新聞の記者さんが、南相馬に来て、取材をして戴き、次のとおり記事にしてもらいました。
【福島・南相馬市ルポ】若手弁護士避難所駆ける 東京出身の西山さん 無料相談「寄り添いたい」
福島第1原発事故で政府が住民の立ち入りを禁止する「警戒区域」などを設定した福島県南相馬市で、東京都出身の若手弁護士がボランティアで被災者の法律相談に乗っている。津波で財産を失った、住む場所が見つからない…寄せられる相談はどれも深刻だ。「『町医者』のような弁護士になる」。バッジに誓った初心を貫き、避難所を駆け回る。
福島第1原発から約25キロ、南相馬市の中心部にある「ひばり法律事務所」。西山健司弁護士(30)は事務処理を終えると、愛車に乗り込み、近隣の避難所に向かった。
週3回、南相馬市と相馬市、新地町に設けられた20の避難所を弁護士仲間と手分けして巡回する。震災後、出産間近の妻は福島市内に避難させ、自身は「緊急時避難準備区域」の事務所にとどまった。
「何か困ったことはないですか?」「おばあちゃん元気ないけど、何かあったの?」。避難所の一角には専用の机と椅子を置いた「無料相談コーナー」もあるが、被災者が自ら訪れるケースはまれだ。しゃがみ込んで世間話を続けながら、専門性が求められる法律相談と判断すれば、場所を移して話し込む。
事務所開設は2年前。ロースクール時代に過疎地で活動する弁護士の講演を聞き「依頼人との心の距離が近く、生まれ育った東京よりも直接役に立てると感じた」。親戚が住み、宮城県出身の母親の実家からも近い福島県での活動を選んだ。
多重債務や離婚の相談に追われた日常は、震災を境に一変した。
「津波で田畑を流され、収入のあてはないのに多額の農機具のローンが残った」「避難中に泥棒に入られ、家財道具を根こそぎ持っていかれた」…。怒りの矛先をどこに向けていいのか分からない働き盛りの父親や、悲しみに追い打ちを掛ける心無い行為に絶望するお年寄りらが言葉を絞り出す。
「親類宅から『荷物扱い』され避難所に戻ってくる人もいる」と西山さん。保険手続きのアドバイスなどを重ね、避難所では「いてくれるだけで安心感がある」(72歳男性)存在になった。
警戒区域や緊急時避難準備区域などまだらの対応を迫られる南相馬市は「人通りが消えた街の色はくすんだように暗い」。
西山さんはブログで南相馬市の現状を発信しながら、「取り残された」と不安を感じる地域と被災者にずっと寄り添うと決めている。