南相馬の実情(原発について)

 今週で、郵便も宅配便も新聞配達も復活です。
 ただ、新聞には広告がほとんど入ってきませんが。
 スーパーもやり始めるとのことで徐々に震災前の生活を取り戻しつつあるように見えます。

 でも、一歩沿岸に向かえば、そこは別世界です。
 散乱するがれきの山、船舶の座礁、何もない風景、とても信じられず唖然とする光景です。
 いまだ、そこに見つかっていないご遺体があると思うと言葉もありません。

 遺体捜索も含め、復興という文字を阻んでいるのは、原発事故であることは間違いありません。
 私は南相馬市に事務所を構え、自宅を建てましたが、原発から北西24キロの位置であるとはこれまで気づきませんでした。
 南相馬からいわきに行く際に、常磐道を通行する際、横目で「あれが原発か」と思う程度でした。
 しかし、今回の原発事故を契機に、これほどまでに原発を認識することはなかったですし、これほどまでに原発に対して、やるせなく行き場のない気持ちを抱くことはありませんでした。
 原発事故のせいで人生が大きく変わってしまった人が大勢いることをご存じでしょうか?
 原発事故のせいで故郷を離れざるを得ない人、原発事故のせいで安住の地を失ってしまった人、原発事故のせいで仕事を失ってしまった人、原発事故のせいで収入を失ってしまった人、原発事故のせいで経営が苦境に立たされている人、原発事故のせいで家族を引き裂かれてしまった人、原発事故のせいで風評被害に遭う人、原発事故のせいで差別的取扱いをされる人。
 原発事故により、相双地域に住み働いていた人々のコミュニティは破壊されました。それは取り戻そうとしても容易には取り戻すことができません。原発は、当たり前に日々の生活を送っていた人たちの安住を一瞬にして奪いました。
 原発は当然に廃炉にされるべきであり、原発は要らない。相双地域の人はほとんどその意見でしょう。

 しかし、これは原発事故の当事者か否かで全く異なります。
 世論ではその過半数が未だ原発容認派です。
 電力需要、企業経営を天秤に掛けます。
 もっとも、その多くは実際には原発被害者という当事者ではないでしょう。
 この原発事故による被害を被った人の気持ち・毎日の苦しみは分かりますか?
 当事者ではないから分かるはずはないでしょうね。
 でも、原発被災地であるこの相双地域に来ることは、容易ではないですか?
 原発を容認する都知事さんも東京にばかりいないで来てみたらいかがですか?
 国会議員の皆さん全員も来てみたらいかがですか?
 もはや、原発に無知などありあえないし、あってはいけない。

 原発が欲しいなら、他人任せにせず、どうぞ自分のお膝元に作って下さい。
 そして、決してそこに住む住民や企業に迷惑を掛けないで下さい。
 これだけはどうぞお願いします。

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