東電賠償問題

はじめに

原発事故による被害は、地域汚染が続く限り継続します。
被害者が事故前と同等の生活や事故前の生業を回復するにはとても長い時間が必要です。
原子力発電を国策として推進してきた国及び事業者である東京電力は、原発事故による被害の回復に責任を負います。国及び東電が賠償を拙速に収束させようとすることは、到底許されません。
被害者が東京電力に対して、何をどのように請求するか、どのような手続を選択するか、弁護士が提案してお手伝いをすることができます。東京電力に対する賠償問題に経験豊富な弁護士が寄り添いサポートをします。

Q.東電に対して賠償を求める方法には何がありますか?
A.①東電に対する直接請求(東電書式の利用など)、②原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続(ADR)、③裁判があります。どれを利用しても良いですし、一つの手続がダメなら別な手続を利用することもできます。
Q.東電に対する直接請求をしてみましたが、思ったより少ない金額の明細書が送られてきました。納得できないのでどうすればいいでしょうか?
A.納得できなければ合意書は出さないで下さい。ただし、納得できる部分について先に合意を成立させることも可能です(その場合、合意書の記載内容には細心の注意が必要です)。なお、東電と交渉しても進展しませんから、センターによる和解仲介手続を利用することを考えましょう。
Q.和解仲介手続とは何ですか?
A.仲介委員という第三者である弁護士を通じて東電と話し合いの手続を行います。手続の進展に応じてセンターから双方に和解案の提示があります。東京と郡山にセンターの事務所がありますが、利用する場合にはご自身の住居の近くで手続をしてもらえるように必ず申出をしましょう。
Q.和解仲介手続を利用するメリットはどこにありますか?
A.生活に困っている場合などに賠償金を一部先行して支払うよう賠償金の内払いを、センターを通じて東電に求めることができます(いわゆる仮払いのイメージです)。なお、当初、東電はこれに応じておらず、公に和解仲介案の尊重を約束したことに違反していました。ところが、東電は、平成24年2月28日になってようやく和解案を受けました。
Q.実際どうすればいいか困っています。
A.東電の書類を出す・出さないにしても、本当に金額はそれでいいのか、他に請求できる項目はないのか、もっと他に手段はないのかについて、弁護士等の法律専門家に相談しましょう。加害者である東電の言いなりになる必要は決してありません。
Q.自営業者・会社等の場合はどうすればいいですか?
A.東電が示した基準と国の指針はよく見ると違いがあります。個々の事業内容によって違うので、個別に対応する必要があります。これから事業を拡大し収益の増加が見込めるはずであった場合や新規に事業を立ち上げた場合などに、過去の決算書のみで損害を算定することは適切ではありません。身近な法律専門家に相談して下さい。
Q.原発事故から3年が経ちましたが、東京電力に対する賠償は時効消滅しませんか?
A.2013年12月に特例法が成立し、時効期間(東京電力が時効を主張すれば権利が行使できなくなるもの)が、3年間から10年間に延長されました。また、特例法により、除斥期間(東京電力の主張にかかわらず、権利が行使できなくなる確定期間)が、損害が生じたときから20年となっています。
Q.避難指示解除準備区域に指定され、東京電力から、72分の24の割合(2年分)による財物賠償(土地、建物、家財等)を受け取りました。しかし、自宅の損傷が激しいため再築しなければ住めず、賠償額に納得がいきません。どうすればいいでしょうか?
A.避難指示解除準備区域(または居住制限区域)でも、事故前に利用していた周辺施設や帰還した場合の不都合等の事情があれば、原子力損害賠償紛争解決センターによるADRにおいて、全損(72分の72の割合)(=帰還困難区域と同じ割合)と認められるケースがあります(ただし、個々のケースによるため、一概に認められるとは限りません)。詳しくは法律専門家にご相談下さい。
Q.旧警戒区域内の事業者ですが、事業用動産の賠償・逸失利益の賠償に納得がいきません。どうすればいいでしょうか?
A.東京電力は、いわゆる直接請求において、税務・帳簿に基づいて形式的に算出し、著しく低額な主張をしているのが現状です。旧警戒区域内の事業用動産の賠償、逸失利益の賠償、不動産の賠償などについては、直接東京電力とやりとりするよりも、原子力損害賠償紛争解決センターによるADRを活用して解決すべき問題です。まずは法律専門家にご相談下さい。
Q.事業用動産の賠償におけるADRの活用例(実際のADRの取扱い)
A.旧警戒区域内の事業者の事業用動産(償却資産(土地、建物、特殊自動車など)、たな卸資産(販売目的の土地・建物など))について、東京電力は税務・帳簿を絶対視しています。
その証拠に、東京電力は、直接の交渉の場(いわゆる「直接請求」)において、税務上の耐用年数等を用いる算定方法を採用しています。
東京電力この算定方法を絶対視していますのでいくら直接交渉しようがその結果は変わりません。
また、東京電力は、営業損害の賠償の中で減価償却費を賠償していることから、減価償却費相当額を賠償することは償却資産の財物の一部を賠償することと同じであるとの理屈でもって、営業損害の賠償が行われた後に償却資産の賠償を行う場合に、減価償却費相当額の賠償額を控除してきます。
東京電力この算定方法をも絶対視していますのでいくら直接交渉しようがその結果は変わりません。
しかし、東京電力のそのような対応こそ、税務・会計を万能視している証です。
そもそも、税務上の耐用年数と実際の使用可能年数・使用見込可能年数は全く異なるものです。
実際に、税務上の耐用年数を経過した償却資産が無価値ではない、転売により金銭に換えることができることは事業者において当然です。
また、減価償却費は実際にかかっている費用ではないにもかかわらず、これを固定費としてみて、財物賠償と重複するから減産しようとする考え自体、形式的に過ぎるのです。
したがって、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)は、このような東京電力の考え方を採っていません。
実際に、センターの公表している和解事例【581】においても、
『旧警戒区域で流通関係業を営む申立会社が所有していた償却資産について、東京電力の主張する税務上の耐用年数等を用いる算定方法を採用せずに実際の効用持続年数を用いて算定した価格を賠償額とし、また、逸失利益の賠償が行われた後に財物(償却資産)の賠償を行う場合について東京電力の主張する減価償却費相当額の賠償額からの控除を行わなかった事例』
として紹介されています。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/11/26/1331335_581.pdf
是非、事業用動産について東京電力に損害賠償請求をする際には、原子力損害賠償紛争解決センターを利用しましょう。
Q.営業損害は打ち切られるのですか?
A.風評被害や間接被害の事案では、直接請求で、東京電力が賠償を打ち切る動きが既に本格化しています。
他方、避難指示区域内の事業者の営業損害について、東京電力は、平成29年3月までの2年分の逸失利益を一括で支払う方針が示され、損害が継続する限り賠償を継続する考えを示しています。
そもそも、原子力損害賠償紛争審査会が示した「中間指針第二次追補」においては、営業損害に係る賠償終期について「被害者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日」を賠償の終期とすることが明示されており、福島県商工会連合会の調べでは、避難指示区域内に所在した商工会会員の事業再開率は約53%、地元での事業再開率は約15%にとどまっており(2014(平成26)年1月20日現在)、「被害者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能」な状況になどないことは明らかです。また、避難指示区域外においても、いわゆる「自主的避難」や風評被害の継続による商圏の縮小・喪失などが継続しており、「被害者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能」な状況は、一部にとどまっているにすぎません。
そもそも、本件原発事故により明らかになったように、原発事故による被害は、地域汚染が続く限り継続するという性質を持っており、被害者が事故前と同等の生活や事故前の生業を回復するには長い期間を要します。原子力発電を国策として推進してきた国及び事業者である東京電力は、原発事故による被害の回復に責任を負うのであって、その責任を直視せず、このような「素案」の方針により賠償を拙速に収束させようとすることは、到底許されないのです。
東京電力に対し、少なくとも当面の間、従前の方式による営業損害の賠償を継続させるとともに、ADRの申立てをすることによって原発事故による被害が継続している実態を説明し賠償を求めていくことが必要です。

【弁護士費用(直接請求・ADR申立ての場合)】

【個人の場合】

ⅰ着手実費について

着手実費として、1人につき1万円をお預かり致します。

  • ※着手実費とは、弁護士活動の実費相当額として着手時に受領する金員であり、預かり金ではなく、事件終了時に残金が出ても原則として返金しないものです。

ⅱ報酬金について

東電からの支払額の10%(消費税別)を上限とします。

  • ※ただし、訴訟は民事事件基準に拠ります。

【会社・個人事業者の場合】

ⅰ着手実費について

着手実費として、1社3万円をお預かり致します。

  • ※着手実費とは、弁護士活動の実費相当額として着手時に受領する金員であり、預かり金ではなく、事件終了時に残金が出ても原則として返金しないものです。

ⅱ報酬金について

東電からの支払額の10%(消費税別)を上限とします。

  • ※ただし、訴訟は民事事件基準に拠ります。