はじめに
相続は誰でもいずれは経験するものですから、避けては通れない問題です。避けては通れない問題だからこそ、生前に相続に際してどのように対策をしておくかがとても重要なことです。亡くなった後の話をすることは不謹慎だと思いがちですが、相続が起きてからでは手遅れになってしまいます。死後にトラブルを残さないためには生前の備えが重要です。専門家からのアドバイスを受けて、しっかり生前に準備をしましょう。
また、いざ相続が起きた場合には、まず何をすべきか迷ってしまうことが多いです。そして、どのくらいの財産があるのか、誰が相続できるのか、どのように分ければ良いのかなど多くの問題があります。相続は死亡により自動的に発生しますので、借金だけを背負ってしまうことさえあります。相続人の数が多いと、銀行の預金の引き出しや土地・建物の名義変更などの相続の手続について、時間と労力がかかります。相続人の間に争いがあればなおさら自分の力で解決することは難しくなります。相続問題について経験豊富な弁護士があなたに寄り添いサポートをします。
相続が発生したら
- ひばり
- 「大変、ぶり叔父さんが亡くなっちゃった。こい叔母さんと子のいなだくん、きんぎょさんが残されてしまったわ。でも、ぶり叔父さんは自営業でたくさんの借金を抱えていたみたい。大丈夫かしら?」
- けやき
- 「そういうときこそ弁護士に相談よ。相続というのはプラスの財産だけじゃなく、マイナスの財産も引き継ぐことになるの。だから、ぶり叔父さんの財産より借金の金額が大きければ、ぶり叔父さんの財産を相続しないようにする相続放棄をすることも考えないとね。ただ、相続放棄はぶり叔父さんが亡くなったときから基本的には3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きをしないといけないわ。」
- ひばり
- 「期間に注意しないと。3ヶ月を過ぎるととたんに難しくなるのよね。他に、相続財産の中で借金を支払って、残りがあれば相続する限定承認という手続きもあるんでしょ?」
- けやき
- 「よく知っているわね。限定承認も亡くなったときから基本的に3ヶ月以内に手続きするの。ただ、これを選ぶならこい叔母さんもいなだくんもきんぎょさんも相続人全員で揃わないといけないわ。それに限定承認はとても複雑な制度だから法律専門家に相談しないと難しいわよ。」
- ひばり
- 「じゃあ、亡くなってから3ヶ月以内に基本的にはどうするか決めないといけないのね。そういえば、こい叔母さんが生活に困っているようだから、ぶり叔父さんの預金の一部を解約して生活費に充てたいと言っていたような。」
- けやき
- 「うかつに相続財産に手を付けてはダメよ。法律上相続したと決められてしまって、相続放棄したくてもできなくなってしまうわ。相続放棄した後も同じよ。注意しないと。」
- ひばり
- 「借金と一緒に相続するような場合には気をつけないといけないのね。相続放棄するかどうするか決めるまでは、うかつに相続財産に手を出さないことが大事なんだね。」
相続トラブルを防ぐ(相続対策)
- 【質問】
- 私は、母と30年にわたって自宅に同居し母の面倒を看てきました。自宅の名義は母です。母は5年前頃から認知症の症状が出始めたため、私は会社を辞めて母の世話をし、介護・看病を続けましたが、亡くなりました。私には兄弟が他に3人いますが、他の兄弟は全く母の世話をしませんでした。母は生前自宅を私にくれると言っていましたが、遺言書はありません。私が母の世話をすべてしていたので自宅を当然に相続できるのですよね?
- 【回答】
- まず母が遺言書を作成していないので長女が自宅を当然に取得することはできません。
もちろん母の相続人である兄弟全員が同意すれば自宅を長女名義にすることはできます。
もっとも、兄弟の同意が得られない場合も多く、相続財産の中で自宅の占める割合が多い場合には特に問題となります。
兄弟間の遺産分割協議の中で、長女が母を療養看護したことについて寄与分(母の財産の維持又は増加について特別に寄与したこと)が認められる可能性があり、長女が長年自宅に居住してきた利益が相続において考慮される可能性もあります。しかし、相続財産の中で自宅の占める割合が多く、かつ、長女が他の兄弟に代償金(自宅に代えて支払う金銭)を支払う経済的能力がないときには、自宅を売却してまで分割をせざるを得ないことも考えられます。母が生前、自宅を長女にくれると言っていただけでは長女が自宅に住むことができず、自宅を売却せざるを得ない事態になることも予想されます。
では、長女に自宅を相続させるためにはどうすればよかったのかというと、母の認知症が深刻になる以前に、公証役場にて、母が自宅を長女に相続させる内容の『公正証書遺言』を作成しておくことが最善の方法でした。
人はいつ亡くなるか分かりませんが、将来起こりうる紛争を未然に防ぐためには自らの財産を誰にどの程度分けるのかを考えて遺言(公正証書が望ましい)を作ることが必要です。
借金も相続する?
- ひばり
- 「ついこの間、お父さんが亡くなっちゃったの。でも、亡くなった後、遺品を整理していたら、お父さん宛のサラ金の請求書を見つけたの。」
- けやき
- 「ひばりちゃんのお父さん、サラ金から借りていたのね。」
- ひばり
- 「家族中大騒ぎ。知らない人から電話がよく来るの。どうすればいい?」
- けやき
- 「そういうときこそ弁護士に相談でしょ。早く弁護士事務所に行きなさい。遺品を一切合切探して、サラ金関係の手紙、ハガキや振込明細書などすべて持って行くのよ。」
- ひばり
- 「探したら何か色々出てきたわ。早速事務所へ行ったわよ。」
- けやき
- 「弁護士は、ひばりちゃんに、お父さんの借金について調査の必要があることを伝えて、会社名をリストアップしていたわね。借金も相続することになるから、その調査のために、受任通知を各社に発送していたわ。」
- ひばり
- 「びっくり。お父さんこんなに借りていたんだね。でも、お母さんが貯めていたへそくりを使えば借金はほとんどなくなるみたい。安心したぁ。」
- けやき
- 「よかったね。ひばりちゃんの家はお父さん名義だから相続放棄はできないものね。」
- ひばり
- 「相続放棄って相続するプラスの財産もマイナスの財産も要らないって手続きすることでしょ。基本的には亡くなってから3ヶ月以内にしなければならないんだってね。」
- けやき
- 「そうね。人が亡くなったら、まずは遺品を整理して借金まがいのものが出てきたらいち早く弁護士に相談しないとね。相続放棄の手続は、弁護士に相談してもいいし、家庭裁判所でも教えてもらえるわよ。ところで、遺言書は出てきたの?」
- ひばり
- 「出てきたわ。勝手に開封しちゃいけないんだよね。次の機会に、教えて頂戴。」
遺言書の書き方
みなさん、自分が亡くなった後のことを考えたことはありますか?
相続人の間で遺産を分ける話さえまとまれば揉め事などおきませんが、どの遺産を誰がもらうかについて話がまとまらないことはよくあることです。決して昼ドラの世界だけではありません。自分が亡くなった際には残った人が問題なく話し合いで分けてくれるだろうと考えている方は多いのではないでしょうか。誰しも亡くなってから問題が起きるのは嫌ですね。そのために、今から自分が亡くなったときのことを考えておくことが重要です。
では、どうするかというと、今のうちに遺言を書くことです。ただ、一口に遺言と言っても、①種類がありますし、種類によってきちんと②法律上の要件を整えていなければ無効になる可能性もあるので、これも後で問題の種になります。また、③財産の分け方にも工夫が必要です。
まず、遺言の種類には、主に、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、本人が自筆で書いて自分で保管するもので、費用はかかりません。これに対して、公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言内容を述べて、公証人が作成した遺言書に遺言者と証人2名にて署名・押印する必要があります。公正証書遺言の作成には財産額に応じて費用がかかります。
では、亡くなった後に争いにならないような遺言を書くにはどうすればよいかというと、公正証書遺言を作成することが一番です。まずは、自分の財産(土地建物等の不動産や預貯金、株式等の有価証券など)として何がどのようにあるのかを調べた上で、どの財産を誰にどの程度分けるかを考えて遺言を作りましょう。人はいつ亡くなるか分かりません。ただ、生きている間は、遺言をいくらでも書き直すことができます。早めに当事務所へ相談しましょう。
遺言書の作り方
- ひばり
- 「この間、見つけた遺言書の相談なの。封がしてあって読めないの。」
- けやき
- 「それなら、家庭裁判所に持って行って検認の手続をしないといけないわね。」
- ひばり
- 「ケンニンってなあに?」
- けやき
- 「裁判所が開封して、遺言書があったことを証明してくれる手続なの。」
- ひばり
- 「別に遺言書が有効か無効かを決める手続ではないんだよね?」
- けやき
- 「そうね。単に、遺言書があって、その内容としてどういうことが書かれているのかを証明してくれる形式的な手続なの。」
- ひばり
- 「お父さんは、お母さんに全財産を相続させるとしか書いてなかったよ。」
- けやき
- 「まあ、ひばりちゃんのところなら特にもめないわね。」
- ひばり
- 「遺言書にも種類があるんでしょ。確か自分で書く自筆証書遺言と・・・」
- けやき
- 「公正証書遺言ね。きちんと遺言書を作成するなら、公正証書遺言がおすすめよ。」
- ひばり
- 「ふーん。遺言の書き方とかいう本が売ってるけど、自分で書くのはどうなの。」
- けやき
- 「自分で有効な遺言を書くにはきちんと法律に記載してある要件を満たさないといけないわ。自分で書くのに自身があるならいいけど。
- ひばり
- 「じゃあ、公正証書遺言ってどういうの?」
- けやき
- 「公証人という人に遺言の内容を述べるの。そうすれば、公証人という人がその内容で遺言書を作ったということを証明してくれるわ。」
- ひばり
- 「でも、財産によって費用は必要だし、立会人も2人いるんだよね。」
- けやき
- 「財産があるときに、後で親族間に揉め事が起きないようにするは公正証書遺言がおすすめよ。」
- ひばり
- 「どうやって作るの?」
- けやき
- 「公証人役場というところに行けば作り方を教えてくれるわ。でも、財産の分け方にもある程度工夫が必要になってくるのよ。」
- ひばり
- 「そうなのね。とにかく法律専門家のところに行って、遺言を作りたいと相談するのが、後での揉め事を防ぐには重要なんだね。」
内縁の夫が死亡したとき
- 【質問】
- 私は内縁の夫と30年間一緒に住んでいますが、都合により籍を入れていません。私たちには子どもがいませんが、内縁の夫には姉がいます。もし内縁の夫が亡くなったとき、私はどうなるのでしょうか?
- 【回答】
- 配偶者であれば常に相続人となります。しかし、内縁の妻は、法律上、内縁の夫の相続人になることができません。そのため、内縁の夫が亡くなった場合、あなたには法律上の相続権がありません。内縁の夫の財産は、すべて法定相続人である姉のもとにいきます。もし、姉が内縁の夫の財産を総取りすれば、あなたは何ももらえないまま、内縁の夫名義の自宅を追い出される可能性すらあります。
姉が内縁の夫の財産を相続放棄してくれれば、あなたはその財産を手に入れることができるかもしれませんが、姉が相続放棄するか否かは姉自身の判断です。仮に姉が相続放棄した場合、内縁の夫には相続人がいませんので、あなたが家庭裁判所に内縁の夫の相続財産管理人選任を申し立てて特別縁故者として財産分与を求めるなど、時間と費用をかけなければなりませんし、必ずしも財産を全部取得できるとは限りません。
あなたが内縁の夫の死後、その財産を取得したいと思うのであれば、生前に夫婦として籍を入れておくことが必要です。
籍を入れないのであれば、あなたは内縁の夫の生前に全財産の名義を移転してもらうか、内縁の夫が死亡した場合には全財産をあなたに譲るという内容の遺言書を書いてもらうことが必要です。
内縁の夫から「そのうち、ちゃんとする」とか、「亡くなったら全部お前にあげる」などと言われても、決してあてにしてはいけません。内縁は非常に不安定なものですから、できるだけ早急に内縁の夫に遺言書(公正証書遺言を作成するのが一番です)を書いてもらいましょう。
詳しくは当事務所に相談しましょう。