事業用動産の賠償におけるADRの活用例(実際のADRの取扱い)

先日の投稿のとおり、旧警戒区域内の事業者の事業用動産(償却資産(土地、建物、特殊自動車など)、たな卸資産(販売目的の土地・建物など))について、東京電力は税務・帳簿を絶対視しています。

その証拠に、東京電力は、直接の交渉の場(いわゆる「直接請求」)において、税務上の耐用年数等を用いる算定方法を採用しています。

東京電力この算定方法を絶対視していますのでいくら直接交渉しようがその結果は変わりません。

また、東京電力は、営業損害の賠償の中で減価償却費を賠償していることから、減価償却費相当額を賠償することは償却資産の財物の一部を賠償することと同じであるとの理屈でもって、営業損害の賠償が行われた後に償却資産の賠償を行う場合に、減価償却費相当額の賠償額を控除してきます。

東京電力この算定方法をも絶対視していますのでいくら直接交渉しようがその結果は変わりません。

しかし、東京電力のそのような対応こそ、税務・会計を万能視している証です。

そもそも、税務上の耐用年数と実際の使用可能年数・使用見込可能年数は全く異なるものです。

実際に、税務上の耐用年数を経過した償却資産が無価値ではない、転売により金銭に換えることができることは事業者において当然です。

また、減価償却費は実際にかかっている費用ではないにもかかわらず、これを固定費としてみて、財物賠償と重複するから減産しようとする考え自体、形式的に過ぎるのです。

したがって、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)は、このような東京電力の考え方を採っていません。

実際に、センターの公表している和解事例【581】においても、

『旧警戒区域で流通関係業を営む申立会社が所有していた償却資産について、東京電力の主張する税務上の耐用年数等を用いる算定方法を採用せずに実際の効用持続年数を用いて算定した価格を賠償額とし、また、逸失利益の賠償が行われた後に財物(償却資産)の賠償を行う場合について東京電力の主張する減価償却費相当額の賠償額からの控除を行わなかった事例』

として紹介されています。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/11/26/1331335_581.pdf

是非、事業用動産について東京電力に損害賠償請求をする際には、原子力損害賠償紛争解決センターを利用しましょう。

どうぞお気軽に当事務所へご相談下さい。

カテゴリー: 東電賠償